「リュシアナ王女殿下のお部屋を訪ねるのだ。平の団員に任せるわけにはいかないだろう」
「……そんな世間体はいいですから、本題に入ってください。何かあったのですか?」
「まずは朗報から。殿下のお望みの物を届けに来た」

 懐からネイビーの布に包まれた物を手渡される。小さいけれど、ネイビーは王家の色。団長がわざわざ届ける意味はあるのだろうが、子どものお使いだけだとは思えない。

「朗報ということは、悪い知らせが?」
「あぁ、『忘れ路の小間物屋』の店主、グレティスが殺された」
「……相手は?」
「分からない。これを別の団員に渡している隙にやられたようだ」
「痕跡は……それくらいの手練れだと――……」
「あぁ、綺麗に、な」

 俺は団長の前だというのに、思いっ切りため息を吐いた。これが嫌味ではないことを知っているからなのか、団長も嫌な顔はしない。

 逆に後ろから、心配そうな声をかけられた。

「何か、あったの?」
「リュシアナ様っ。これは、その……」

 慌てふためいていると、団長は「カイル、あとは頼んだ」と扉を閉め、そそくさと逃げていってしまった。

 いや、その判断に間違いはないのだが……団長だろう? リュシアナ様に挨拶くらいしていけよ。