転生王女の私はタロットで生き延びます~護衛騎士様が過保護すぎて困ります~

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「カイル?」

 椅子に座っているリュシアナ様が、不思議そうに見上げる。先ほどもそうだったが、その上目遣いは反則だ。つい本音が口から……いや、その後すぐに言葉を濁したから、大丈夫だろう。

 しかし、最近のリュシアナ様は、まるで記憶が戻ったかのような鋭さがある。もしかして、俺の気持ちに勘づかれたか? いやいや、別に困ることではないのだが……護衛という立場を利用したようで気が引ける。

 今のリュシアナ様は記憶喪失なのだから。

「どうかしたの?」

 気がつくと、先ほどよりも近い位置にリュシアナ様が立っていた。

 ……立っていた? いつ、立たれたんだ!?

 しかも、リュシアナ様の白い手が伸びてきて、俺の頬に触れた。顔が火照っているのか、冷たくて気持ち良かった……ではなく! 冷たい!?

 思わず俺は、その手を掴んだ。

「っ!」
「いつからですか?」
「え、何が?」
「手が……こんなに冷えています」

 そう指摘をしても、リュシアナ様は不思議そうに首を傾げるだけ。