転生王女の私はタロットで生き延びます~護衛騎士様が過保護すぎて困ります~

 大臣の解雇と任命は、陛下の承認が必要だ。であるならば、可能性は一つしかない。リュシアナ様が陛下に進言したのだ。
 陛下は解雇された大臣の裏の顔を知らない。けれどリュシアナ様は、侍女にも気づかれずに中庭へ行けるのだ。その過程で、大臣の噂話を聞いていたとしても、おかしくはなかった。

 また、中庭というと、まるで確認するかのように、尋ねてくることがあった。

「訓練場にある道具は足りている? ボロボロで使い辛いのではなくて?」

 するとその数日後には、新しい道具が訓練場に届けられていた。誰がどう見ても、リュシアナ様がしたことだと断言せざるを得ない。

 その他にも、王宮内のことや国のことを聞かれ、それに答えられるように、情報を集めたものだ。少しでもあの方の力になりたい。力になれば、この国がより良い方向に進むのではないか、と思ったのだ。

 ミサ殿の目を掻い潜り、陛下の手が届かない部分を陰ながらサポートされていたリュシアナ様。そのような方に護衛を付ける話が持ち上がり、俺が飛びついたのは、当然のことだった。

 けれど、まさか記憶喪失になっているとは、夢にも思わなかった……。