転生王女の私はタロットで生き延びます~護衛騎士様が過保護すぎて困ります~

 コロコロと表情を変えるリュシアナ様を見て、目が離せないのは、こんなところだとしみじみ感じた。

 以前の……記憶喪失になる前のリュシアナ様とは、何度かお会いしたものの、言葉を交わしたのは、ごく僅か。それなのに惹かれたのは、陛下の寵愛を受けるただの王女ではなかったからだ。

 おそらく、中庭以外にも人目を避けて行く場所があるのだろう。王宮内での出来事を、いくつか解決されている御姿を目にした。

 たとえば、一介の騎士である俺の耳にも届くほど、評判の悪い大臣がいたとする。陛下や宰相、力のある貴族にはいい顔をし、逆に自分よりも立場が弱い侍従や侍女には手を挙げる、そんな最低な大臣が。
 そういう輩は、別に王宮に限ったことではない。うまく立ち回り、気づかれずに出世していくのが常だった。しかし……。

「聞いた? あの大臣の話。就任して、たった一週間で辞めさせられたらしいわよ」
「え!? ってことは、誰かが密告したの?」
「そんな危ない橋を、誰がこんな短期間でやるのよ」
「た、確かに……でも、なんで?」
「知らないわよ。誰が密告したのかな、と思って聞いたんだけど……その様子だと知らないみたいね」

 王宮の廊下を歩いていると、そんな噂話を耳にした。実際、確認してみると、その大臣の席にはすでに、別の者が座っていたのだ。