転生王女の私はタロットで生き延びます~護衛騎士様が過保護すぎて困ります~

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 寂れた外観であっても店内は、というのがよくある話だが、ここは予想通りの内装だった。あえてミステリアスな雰囲気を醸し出したいのか、照明は最小限。
 天井に吊るされたペンダントライトと、ステンドグラスに覆われたテーブルランプの二種類のみ。それも淡い光を放ち、来る者を別世界へと誘っているかのようだった。
 
 けれど店内を見渡すと、それが間違いだと気づく。奥へと進めば進むほど、本当にお店なのかと疑うような光景を目にしたからだ。

「リュシ……ではなく、シア様。まだ奥へ進むのですか?」

 ミサが怯えた声で、お忍び用の名を呼んだ。それは、お父様の寵愛が国内に知れ渡っているから、だそうだ。

「……怖かったら、無理してついて来なくてもいいからね」
「それこそ、無理な話です。私から約束を破るわけにもいかないし……」

 どうやらミサにとってこの状況は、敬語を忘れるほどのことらしい。

 でもごめんね。あと少し、あと少しで分かりそうなの。
 
 私はさらに突き動かされるかのように、奥へと進んだ。その間、店主らしき人物は姿を現さなかった。それもまた、ミサが怯える理由なのだろう。私にとっては好都合だったけれど……。