転生王女の私はタロットで生き延びます~護衛騎士様が過保護すぎて困ります~

「ミサ、あのお店で間違えないのね」
「はい。まだここに店を構えてくれていて、助かりました」
「そうね」
「本当に入られるのですか?」

 明らかに怪しい、とカイルも感じたのだろう。普段の私なら、それに同意していた。けれど……。

「そのために城下へ来たのよ。行かないでどうするの?」
「ですが……護衛としては――……」
「分かっているわ。だからミサも、渋ったのよね」
「……はい」

 今からでも遅くはない。引き返してほしい、と二人が目で訴えかけている。
 
 でも、ダメなの。上手く言葉にできないけれど、あの場所に行け、と私の中の奥にある()()が、確信めいた声で囁いている。

「ごめんね。少しだけ私の我が儘につき合って」

 目深に被った黒いフードを少しだけ上げて、二人の目を交互に見る。黄緑色と深緑色の瞳が僅かに揺れたが、私の行く手を開けてくれた。

「ありがとう」

 私はその()()に突き動かされるかのように、歩を進めた。