転生王女の私はタロットで生き延びます~護衛騎士様が過保護すぎて困ります~

 そうして私は、簡素なワンピースの上に、丈の長い黒いローブを羽織らされていた。前を歩くミサと、後ろにいるカイルもまた、丈の長い黒いローブ姿である。

 王宮でこのような姿をしていたら、真っ先に怪しまれるのだが、誰にも見られずに中庭へ行けたように、抜け道もまた、同じようなルートが存在した。
 中庭の時とは違い、こちらはまさに避難用の道、といった感じで、薄暗くまるでトンネルのようだった。

 まただ。記憶がないのにトンネル、だなんて。どうしてそう思ったのかしら。

 けれどそんな疑問は、王宮の壁を越えた瞬間、吹き飛んだ。

 王宮が静だとしたら、城下は動そのもの。壁の向こうは別世界だといっても過言ではなかった。正面に見える石畳の道には人があふれ、どこからか香ばしい匂いが鼻をくすぐる。
 
 ミサから聞いていた、(いち)が近くにあるのかしら。確かリュシアナが倒れていたのも、市だと言っていたわよね。色々な意味で行くのが楽しみだわ。

「リュシアナ様。すぐに駆け出したい気持ちは分かりますが、ここは……」
「分かっている。分かっているわ。ミサたちから離れないように、でしょう? 着いて早々、約束を破るような真似はしないわ」

 ここに来るのに、どれだけ苦労したと思っているのよ。けれど、後ろにいるカイルも、心配そうに私の顔を覗き込み、「無理はなさらないでください」という始末。

 私……目的地に無事、辿り着けるのかしら。