「今のリュシアナ様を見ていると、本当に記憶喪失なのが疑ってしまいますね」
「それは以前のリュシアナに似ている、ということ?」
「いいえ。その鋭さです。元々、賢い方なのだとは思いますが……」
こ、これは褒められている、のよね。疑われているのに、顔がニヤけそうだった。私はそれを隠すように立ち上がり、中庭へ続く道の上に足を踏み入れた。
「そんなことよりカイル。中庭は入れるのよね」
「はい。誰でも自由に入れる場所ですが、あまり人が立ち入らないのでお気をつけください」
人がいないのに、何に気をつけるの? という疑問が浮かんだが、今は中庭だ。後ろにいるカイルを見てはいけない。今の私が、どんな顔をしているのか、分からないのだから。
けれど一歩、足を踏み入れた途端、目にしたものに、私は頭を殴られたような衝撃を受けた。
「リュシアナ様?」
蔦の絡まったアーチ。庭によくあるものなのに、その間から見える彫刻が、一枚絵のように脳へ入ってきた。
緑色の蔦の中にある、女性の裸体。彫刻であるからこそ、許されるものだけど、これは……。
「『世界』?」
自然と出た言葉に驚く暇もなく、激しい頭痛に襲われた。
「リュシアナ様!?」
頭を抱えて、その場で蹲る。目の前に誰かの気配を感じ、手を伸ばした。
助けて……――!
「リュシアナ様!!」
その手が握られたような感触を最後に、私は意識を手放した。
「それは以前のリュシアナに似ている、ということ?」
「いいえ。その鋭さです。元々、賢い方なのだとは思いますが……」
こ、これは褒められている、のよね。疑われているのに、顔がニヤけそうだった。私はそれを隠すように立ち上がり、中庭へ続く道の上に足を踏み入れた。
「そんなことよりカイル。中庭は入れるのよね」
「はい。誰でも自由に入れる場所ですが、あまり人が立ち入らないのでお気をつけください」
人がいないのに、何に気をつけるの? という疑問が浮かんだが、今は中庭だ。後ろにいるカイルを見てはいけない。今の私が、どんな顔をしているのか、分からないのだから。
けれど一歩、足を踏み入れた途端、目にしたものに、私は頭を殴られたような衝撃を受けた。
「リュシアナ様?」
蔦の絡まったアーチ。庭によくあるものなのに、その間から見える彫刻が、一枚絵のように脳へ入ってきた。
緑色の蔦の中にある、女性の裸体。彫刻であるからこそ、許されるものだけど、これは……。
「『世界』?」
自然と出た言葉に驚く暇もなく、激しい頭痛に襲われた。
「リュシアナ様!?」
頭を抱えて、その場で蹲る。目の前に誰かの気配を感じ、手を伸ばした。
助けて……――!
「リュシアナ様!!」
その手が握られたような感触を最後に、私は意識を手放した。



