転生王女の私はタロットで生き延びます~護衛騎士様が過保護すぎて困ります~

「それともここに何かあるの? 注意点があるのなら、先に言ってくれると助かるのだけれど」
「……記憶喪失なのに、やはり鋭いですね」
「ここを選んだのがカイルだからよ。私を中庭に連れて来たかった理由があるのかなって思ったの。ミサを遠ざけた意図も気になるし」

 私はカイルの真正面に立ち、疑いの目を向けた。すると、どこか嬉しそうな表情が困惑へと変わる。

「理由は……ただの自己確認です。リュシアナ様がここを覚えておられるのか、どうか。知りたかったのです」

 記憶喪失だと知っているのに、確認?

 わざわざ連れて来るほど、カイルにとっては重要なことなのだろう。私は辺りを見渡した。

 中庭へまっすぐ続く、丁寧に舗装された小道。足音を優しく受け止めるその道の両脇には、手入れの行き届いた花壇が並んでいた。
 色とりどりの草花が季節を告げるように咲き誇り、淡い風が花びらを揺らしては、ほのかな香りを運んでくる。もっと見たければ、中庭に入れ、といわんばかりである。