転生王女の私はタロットで生き延びます~護衛騎士様が過保護すぎて困ります~

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 一階の廊下を一望できる部屋で、赤褐色の髪の女性が、椅子に座りながらリュシアナとカイルを見ていた。末の王女とその護衛騎士との戯れを、微笑ましく見る者もいるだろう。もしくは不謹慎だと感じる者もいるかもしれない。

 膝に乗せた本を閉じ、彼女は窓の外を凝視する。その茶色い瞳は、まさに後者の心境とばかりに冷たいものだった。

「クラリーチェ様。何をご覧になって……あれは!」

 近くにいた侍女が、クラリーチェの異変に気づき、同じように窓の外へと視線を向ける。

「護衛騎士と手を繋ぐなんて、いくら記憶喪失でもふしだらです」
「そうね。でもリュシアナは、私と違って他国に嫁ぐことはないのだから、別に問題はないでしょう? むしろあの騎士と、結婚させようとしているのかもしれないわよ」
「……陛下が直々に任命されたそうですからね」
「私には好きな騎士を選べ、と突き放しておきながら、あの子には……」

 クラリーチェは窓から目を背けた。