転生王女の私はタロットで生き延びます~護衛騎士様が過保護すぎて困ります~

「さきほども言いましたが、中庭へは通常のルートを使いません。そのため、ミサ殿には同行を遠慮していただきました」
「知られてはマズイの?」
「あまり褒められたルートではないため……」

 つまり、怒られるのが分かっている道ってこと?

「……私がそのルートを知って、大丈夫なの?」
「王族なら、むしろ知るべきです。いざという時は役に立ちますので」
「あっ……」

 その時は、傍にカイルがいないことを意味している。思わず握り返した手に力が入った。

「すぐに必要になる出来事は起こりません。アルフェリオン王国は平和ですから。リュシアナ様が記憶喪失になる前は、お忍びで城下に出かけられていた、と聞きました。それだけで分かっていただけるかと思います」
「っ! そ、そうね。ありがとう、カイル」

 ミサとは違う気遣いと優しさに、胸が温かくなった。と同時に感じる、寂しさ。
 彼らは私が『リュシアナ』だから、そう接してくれているだけ。リュシアナの記憶がないのに他の、そう例えば王女や侍女、護衛騎士と聞いても、こんなものかと素直に享受してしまう思考。これは果たして、リュシアナの記憶なのだろうか。もしくは、別の存在のものなのか。