転生王女の私はタロットで生き延びます~護衛騎士様が過保護すぎて困ります~

「でも婚約者、ということはうまくいったのね」
「はい。その報告も一緒にできれば、と思いまして」
「ということは、他にも?」
「ミサから様子を見てきてほしい、と頼まれたんです。私も気になっていた、というのもありますし、彼の商団の伝手を借りて連れてきてもらいました」
「まぁ! もしかして、その商団は国中を回っているの?」

 私が嬉々として聞くと、逆にタリアがたじろいだ。

「安心して、別に変なことを頼むわけではないの。大変なことでもないけれど、大がかりなことをしたくてね。うまくいけば、戦争を早期に終わらせる、もしくは回避できるかもしれないの」
「大がかり、ですか?」
「えぇ。噂を、ね。流してほしいのよ」

 たったそれだけ? と思っているのだろう。ポカンとした顔をしていた。だから私はカイルに視線を送り、タリアにある物を渡すことにしたのだ。

「リュシアナ様、これは?」
「アルフェリオン王国が、ノルヴィア帝国に宣戦布告されたのは知っているわよね。そのキッカケと目論んだ人物の物的証拠よ」

 タリアの息を呑んだ音が聞こえるようだった。それもそうだ。重要機密であるお姉様からの手紙を、一介の令嬢に渡したのだ。よほど肝が据わっていない限り、驚くことだろう。