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「んん~」

 見慣れない天井を見て、ガッカリする。ここ最近、ずっとそうなのに、なかなか慣れない。だけど私、さっきまで馬車の中にいなかった? 宿ではなかったはず……。

「お目覚めですか? リュシアナ様」

 心配そうに覗き込むカイルの姿に、ミサと重なる。この世界で初めて目を覚ました時、同じようにミサが近づいてきたのだ。
 背中に触れるマットレスも、あの時と同じふかふか……ふかふか?

「ここ……どこ? 宿にしては、豪華な部屋に感じるんだけど」

 起き上がろうとすると、カイルが咄嗟に近づき、背中に手が回された。さらにヘッドボードとの間に、クッションを置いてくれた。おそらくミサのやり方を見ていたのだろう。それでも、カイルは侍女ではないのだから、私の世話をする必要はない。

「ありがとう。でも、これくらいは自分でできるわよ。ミサがいた時はしてもらっていたけど」
「俺がしたいんです。それに……リュシアナ様は二日間、目を覚まさなかったので」
「ふ、二日も!?」
「警護をしていた者から聞きましたが、あまり休めていなかった、とか」
「ミサもカイルもいないのよ。環境が変われば無理もないでしょう? お小言は聞きたくないわ」
「……なら、俺がいなくて寂しかったから眠れなかった、と言ってください。それで満足しますので」

 本当のことだけど、本当のことだけど……本人を目の前にして言え、と? 何の罰ゲームよ!