「あぁ~。タイミングのいい時に止まりやがって」
「カイル?」
「あっ、すみません。言葉使いが悪かったですよね。すぐに直します」
「どうして? 素のカイルも見てみたいから、そのままでもいいわよ。さすがに他の人がいる時は無理だとは思うから、二人だけの時なら」

 とはいえ、急には無理かしら。改めてカイルと気持ちが通じ合ったのに、いつまでも敬語で話されるのも、ね。私としてはさっきの言葉使いの方が馴染みはあるわけだし、そのまま使ってほしいのだけれど……。

「そこについては、検討させてください。今は馬車が止まったので、確認しなくてはなりませんので」
「あっ、そうね」

 うまく刺客を撒いたのか、気になるもの。だからカイルに確認して……。

「リュシアナ様?」
「何?」
「その……手を離していただけますか?」
「手?」

 何を言っているの? 手ならここに、と視線を動かすと、なぜか腕がカイルの方を向いていた。さらにその先を見ると、裾をギュッと掴んでいる。