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揺れる馬車に乗っていると、前世のことを思い出す。バスも電車も、これほどではないけれど、揺れていた。今のように寝不足だと、その揺れが心地よくて、うっかり寝てしまうことがあったのに、それさえもできないなんて……重症としかいいようがなかった。
広い馬車の中なら、横になれそうなのに、私はただ窓際に座り、流れる景色を見ているだけだった。同じような景色を、飽きもせずに見ている日々。離宮まで、あとどれくらいあるのかも分からない。
もう一層のこと、と思ってしまったのがいけなかったのだろう。引き寄せるのは、なにも幸運だけではない。
「えっ、何?」
突然、馬車が止まったのだ。ずっと窓の外を眺めていたから、これが不自然な止まり方だというのは分かる。馬車が止まる時は、必ず街か村だったからだ。
「扉から離れてください! けして外に出てはいけません!」
あえて私の名前を呼ばずに警告する御者。馬車の後ろには、離宮に持って行く物資もあったため、幌馬車がついてきている。その中には勿論、物資以外のものも積んでいた。長旅には必須な護衛たちである。
揺れる馬車に乗っていると、前世のことを思い出す。バスも電車も、これほどではないけれど、揺れていた。今のように寝不足だと、その揺れが心地よくて、うっかり寝てしまうことがあったのに、それさえもできないなんて……重症としかいいようがなかった。
広い馬車の中なら、横になれそうなのに、私はただ窓際に座り、流れる景色を見ているだけだった。同じような景色を、飽きもせずに見ている日々。離宮まで、あとどれくらいあるのかも分からない。
もう一層のこと、と思ってしまったのがいけなかったのだろう。引き寄せるのは、なにも幸運だけではない。
「えっ、何?」
突然、馬車が止まったのだ。ずっと窓の外を眺めていたから、これが不自然な止まり方だというのは分かる。馬車が止まる時は、必ず街か村だったからだ。
「扉から離れてください! けして外に出てはいけません!」
あえて私の名前を呼ばずに警告する御者。馬車の後ろには、離宮に持って行く物資もあったため、幌馬車がついてきている。その中には勿論、物資以外のものも積んでいた。長旅には必須な護衛たちである。



