転生王女の私はタロットで生き延びます~護衛騎士様が過保護すぎて困ります~

 声をかけてきたのは、御者と名乗ってはいるが、カイルと同じ騎士である。離宮には離宮で警備が万全であるため、王宮にいた時のように護衛をつけてもらえなかったのだ。しかし移動となるとそうはいかない。

 だったらカイルが送ってくれればいいのに、と思うけど。

『陛下より護衛の任を解かれたので、無理かと。で、でも! なんとかしてみせますから、だから姫様も希望を捨てないでください』

 私があまりにも無気力に振る舞っていたからだろうか。ミサまでこの世の絶望とでもいうような顔をしていた。

 今はそのミサもいないのだ。しっかりしなくては。私は立ち上がり、扉を開けた。

「ありがとう。今日もよろしくね」

 御者が一礼をし、私の前を行く。同じ騎士だからか、カイルの背中と重なった。

 さっき、上手く笑えていたかしら。カイルだったら、「無理しないでください」と言ってくれたかもしれない。私はここ最近、よく眠れていなかったからだ。