同期と私の、あと一歩の恋

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過去のことを思い出すだけで苦々しい気持ちになる。
しかし、いつまでも引きずられているわけにはいかない。
切り替えて目の前の仕事に集中しよう。

ふと、ずっと気になっていたことを思い出して口を開いた。

「そうだ、このアニマルシリーズってレアアイテムはまだ導入してないでしょ。だから、今回はレアアイテムとして色違いを提案しようと思うんだけど、どうかな?」
「あー、そこは盲点だったかも。他のカプセルトイにはレアキャラとかレアアイテムは導入済みだもんな。よく気づいたな。俺はいいと思うよ」

本田くんは感心したように頷いた。
彼の言葉はいつも私に自信を与え、背中を押してくれる。

「本田くんに相談してよかった。ありがとう」

笑顔でお礼を伝えた。

私たちは同期ということもあり、お互いに遠慮なく本音で言い合えるのがいい関係だと思っている。

『もっとユーザー目線で考えたほうがいいと思うけど』
『うーん、でもこのターゲット層には、こっちの方が刺さると思わない?』
『確かに。じゃあ、その方向で進めてみよう』

こんな風に企画について正直に意見交換できるのが本当にありがたい。
私たちはライバルであり、良き相談相手だ。
新しい発想や行き詰っていた問題の解決策は、会話の中からヒントを得て見つかることもある。
馴れ合いのない真剣なやり取りがあるからこそ、お互いに高め合っていけるんだと思う。