中学生の頃、席が隣の男友達がいた。
名前は仮のAくんとしよう。
Aくんは文武両道で優しくてクラスの人気者。
そんな彼が異性でよく話をしている相手が私だった。

何度も目が合ったり、話していても楽しくて気が合うなと思っていた。
次第に彼のことが気になり始め、友達から『絶対に紗世のこと好きだから告白してみなよ』という後押しがあった。

私は期待と不安が入り混じる中、ドキドキしながら勇気を振り絞って想いを伝えた。
でも、『ごめん。俺は広瀬さんのこと友達だと思っていた』というAくんからの返事。
それを聞いた瞬間、ショックで言葉が出なかった。

全部、私の勝手な勘違いだった。
もしかして、なんてうぬぼれていた自分が恥ずかしい。
彼にとって私はただの友達でしかなかった。
告白後、私たちは元の関係に戻ることはなく、会話もなくなって気まずいまま卒業の日を迎えた。

それ以来、誰かに好意を抱いても自分の気持ちを伝えるのが怖くなった。
また、あの時のように勝手に勘違いして、傷付くのが嫌で『好き』という気持ちを心の奥に閉じ込めていた。

さっきの告白の場面を見て、昔の自分と重なった。
自分の気持ちを相手に伝えるのは凄く勇気のいることだ。
私の時と状況は違うけど、彼女もきっと、どうしようもない気持ちに押しつぶされそうになっているのかもしれない。

胸のざわつきに耐えきれず、休憩スペースに足を踏み入れることなく、背を向けた。