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あれは半年前のこと。

芹沢(せりざわ)部長から企画書の不備を指摘され、少し落ち込んでいた。
自分でも理由は分かっている。
分析が甘く、ターゲットとなる子供の年齢層を絞り切れていなかったことが原因だ。

『広瀬のことだから原因は分かっていると思う。方向性は間違っていないから、もう少しデータやリアルな声を聞いてみるといい。次はいい企画書になると思う』

芹沢部長の言葉は本当に的確で、私のことをちゃんと理解してくれている。
言葉の隅々から彼からの期待を感じ、次こそは完璧な企画書を作って応えたいという気持ちが込み上げてきた。

一度、疲れた頭をリフレッシュしようと企画部のフロアを出た。
うちの会社には休憩スペースとリフレッシュルームがある。

休憩スペースは社内に数ヶ所設けられている。
窓際に小さな円卓が二つ、入り口には目隠しの作用もある観葉植物が置かれたこぢんまりとした空間。
部屋の隅にはウォーターサーバーとコーヒーメーカーがあり、簡単な打ち合わせをしたり仕事で疲れた時に一息つくにはもってこいの場所。

リフレッシュルームはカフェのようなお洒落な内装で、社員が仕事の合間に気分転換したり、他部署の人とコミュニケーションをとるために設けられた多目的スペースだ。
マッサージチェアが設置されたり、その名の通りリフレッシュするには最高だと思う。

そして、私が向かったのは休憩スペース。
足を踏み入れようとしたとき、先客がいることに気づく。