私の些細な変化も見逃さないなんて、嬉しいような気恥しいような複雑な気持ちになる。
本田くんは言葉を続ける。
「でも、俺が頭を触る度に広瀬は顔を赤くしてたから、嫌われてはいないと思ってた。それでずっと様子見してたけど、今日は勘違いする人がいるかも知れないとか言うから、もしかしてと思って賭けに出た。ぶっちゃけ、結構前からさりげなくアピールしてるつもりだったけど、広瀬は全然気づいてくれなかったからな」
拗ねたように言う本田くんの声は、いつもより少し甘く感じた。
じゃあ、半年前に本田くんが森藤さんに告白された時に『好きな人がいる』って言っていたの、私のことだったの?
嬉しい誤算にドキドキしてしまう。
不意に、今朝見た占いの言葉を思い出した。
『一位は乙女座!今日は今まで苦労したことが報われる日。積極的に行動して!告白も吉』
一度、居酒屋で言いかけた『好き』という気持ちを、今こそ伝える時だ。
森藤さんの勇気、本田くんの優しさが、私の心の奥に閉じ込めていた気持ちを解き放つ鍵になっていた気がした。
「私も本田くんのことが好き」
勇気を出して言えば、本田くんの目が大きく見開かれ、彼の頬がうっすらと赤く染まっていく。
そして「よかった」と安堵したような声で言い、彼は無邪気な笑顔を見せる。
初めて見るその表情に、胸が甘く締め付けられた。



