「マジで?よかったな」
自分のことのように喜んでくれる本田くんは、椅子から立ち上がると私の頭をぐしゃぐしゃと掻き回すように撫でた。
「ちょ、ちょっと、やめてよ」
乱れた肩までの髪の毛を手櫛で直しながら、私は本田くんにジト目を向けた。
前々から思っていたけど、本当に彼は女心を分かっていない。
私は、いつか言おうと思っていたことを口にした。
「本田くん、そうやって誰彼構わずスキンシップするの、どうかと思うよ」
「は?どういうこと?」
本田くんは首を傾げ、怪訝な表情で私を見る。
彼にその気はなくても、こんな風に触られると勘違いする女性は、間違いなく続出するだろう。
自分がイケメンでモテることを全く自覚していないから、無意識に触れたりするんだろうか。
彼の無自覚な行動は、女性にとってはたちが悪いと思う。
「本田くん、自分で気づいてる?」
「だからなにが?」
「さっきみたいに、いろんな女の人の頭を撫でたりしない方がいいよ」
「えっ?」
「本田くんが何気なく触れるだけで、勘違いする人とか絶対にいると思う。私は慣れてるから平気だけど」
強がって言ってみたものの、私が勘違いしそうになった女一号かもしれない。
そんなことを考えていたら、本田くんは不本意だとばかりに口を開く。
「あのさ、ちょっと訂正させてもらってもいい?」
「へ?」
今度は私が首を傾げる番だ。



