「ぬいぐるみ特有の柔らかさや温かさ、抱きしめた時の安心感はぬいぐるみならではのよさだから、それを大事にしたいんだよね。さっき、アクリルキーホルダーと書いてみたけど、素材が硬すぎて即却下よ。既存のキーホルダーは柔らかいけど、それとはまた違うタイプにしないといけないから頭を悩ますわ」
「確かにそうだな」
せっかく新バージョンを提案するんだから、より良いもので納得できるものがいい。
「ぬいぐるみって、触り心地も大事だよな。それを抱いているだけで安心感を覚えたり、ストレスの緩和にもなるだろ」
触り心地にストレス緩和?
本田くんの言葉にある素材の玩具が思い浮かぶ。
「あっ、スクィーズってどうだろう」
「スクィーズって握って形が変わったりする柔らかいやつだよな」
「うん。それならぬいぐるみ感も失われないと思うんだけど、どう思う?」
「いいじゃん。それで練り直して見たら?」
「うん、そうしてみる。ありがとう。本田くんのお陰で、いいアイデアがひらめいたよ」
笑顔で言うと、彼は少し腰をかがめて私の頭を優しくポンと撫でた。
「俺は普通に話していただけだよ。でも、それで広瀬にいいヒントを与えられたみたいでよかったわ」
本田くんの優しい手の温もりが胸の奥にじんわりと広がる。
彼にとっては何気ない仕草なんだろうけど、私にはその温もりが、どうしようもなく切なくて苦しいものでもあった。
不意に、偶然聞いてしまった彼のある言葉を思い出し、キュッと唇を噛んだ。



