同期と私の、あと一歩の恋

そのタレントの物まねをしている自分の姿が頭に浮かんだ瞬間、悪寒がした。

多分、もっと酔っていたら話を振られた勢いで、物まねをやっていたかもしれない。
でも、今の私はまだビール一口ぐらいしか飲んでいないのでシラフ同然だ。
恥ずかしさの方が勝って、物まねなんて出来るわけがない。

「え、絶対に嫌だよ。乙女に物まねなんてやらせないでよ。罰ゲームじゃないんだから。私にも恥じらいってものがあるんだからね」

口を尖らせて言えば、本田くんは「悪い悪い」と言って笑う。

「やっぱり、広瀬と飲むのは楽しいな」

不意にそんなことを言われ、思わずドキッとする。
動揺を隠しつつ、口を開く。

「え、どうしたの急に?」
「いや、なんとなく。前から思ってたけど、広瀬といると楽っていうか、気兼ねなくいられるんだよな。無言の時間があっても時に気にならないって言うか、自然体でいられるっていうのかな?あと、話のノリも合うし、一緒にいてて居心地がいいんだ」

そう言って本田くんはグラスのビールを一口飲んだ。

ちょっと待ってよ~!と私は心の中で叫んだ。
こっちが勘違いするようなことを言わないでほしい。

本田くんは同期として、純粋な気持ちで言ったと思う。
でも、今の言葉は片想いしている私にとって間違いなく勘違いさせてしまうので、本当によくない。
私一人、動揺してドキドキしているんだから、ホントに罪作りな人だ。

こんな不意打ちは困る。