同期と私の、あと一歩の恋

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本田くんが予約してくれたのは、会社の最寄りの駅前にある、こぢんまりとした居酒屋。
『酔い処、心の灯』というお店。

年季の入った木の引き戸を開けて店内に入ると、L字型のカウンター席が目に飛び込んできた。
その奥には、四人掛けのテーブル席が二つある。

壁にはおすすめメニューが書かれている短冊が所狭しと貼られていて、お洒落というよりはどこか懐かしい雰囲気を醸し出している居酒屋だ。
今風な居酒屋もいいけど、常連客のおじさんたちがワイワイと騒いでいるような居酒屋も嫌いではない。
私たちは一番奥のテーブル席に座った。

「へぇ、なんかいい感じのお店だね」
「だろ。評価も高いし広瀬も好きそうだなと思って選んだんだ」
「さすが!じゃあ、乾杯する?」

お互いにグラスを合わせて乾杯した。
喉を通り過ぎるビールの冷たさが心地いい。

「あー、美味しいっ。久々のアルコールは最高!」
「広瀬、まず腹に何か入れろよ。ほら、この唐揚げ美味そうだぞ。香味ダレにつけるんだって」
「ありがとう」

差し出された唐揚げのお皿から一個箸で掴み、香味ダレをたっぷりつけて口に運んだ。

「ヤバイ、ジューシーな肉の旨味とこのタレが絶妙に絡み合って美味しいよ」
「専門家みたいな食レポじゃん。ちょっと某有名タレントの物まねして言ってみてよ。宝石箱とか言って」

本田くんは、ニヤニヤしながら言ってきた。