さっきアクリル素材の案を書いてみたものの、冷静に考えるとぬいぐるみの柔らかさを再現できない時点で論外だった。
別のアイデアを絞り出そうとするけど、シャーペンをまたクルリと回すばかり。
椅子の背もたれに背中を預け、天を仰いだ。
視線の先の白い天井にヒントが書かれているわけでもなく、小さく息を吐く。

「よう、進みはどうだ?」

突然かけられた声に、肩がビクリと跳ねた。
慌てて姿勢を正し、声のした方を見ると、そこには同期の本田慧(ほんだけい)が爽やかな笑顔を浮かべて立っていた。

彼は黒髪のミディアムヘア、涼やかな目元に形のいい眉、バランスの取れた端正な顔立ちで正統派イケメンだ。
女性人気が高いしモテるけど彼女はいない。
身長は百八十センチ近くあり、服の上からでもわかる引き締まった身体つき。
私が百六十センチだから二十センチも高い。
本田くんと話す時は上を見上げるようになるので、たまに首が痛くなる。

私の顔を見た本田くんは「苦戦しているみたいだな」と苦笑いした。

「その通り。ちょっと行き詰って迷走中。どうもピンとくるものがないんだよね」
「あー、アニマルキーホルダーね」

本田くんは私の企画書を手に取って目を通すとプッと吹き出す。

「書き出したアイデアに、ご丁寧にダメ出し付きかよ。アクリルキーホルダー硬すぎるって……」

そう言って、企画書をデスクの上に戻す。