あれから二週間後の企画会議当日。
万全の準備はしたはずなのに、心臓が今にも飛び出しそうなぐらい緊張している。

プレゼンは何度経験しても慣れることはない。
失敗したらどうしよう、上手く説明できるのか、そんな不安が頭の中をぐるぐると駆け巡る。
企画書の入ったファイルを手に、重い足取りで会議室へ向かおうとしたら、本田くんに声をかけられた。
彼は今日の企画会議には参加しない。

「広瀬、大丈夫か?」
「大丈夫そうに見える?緊張して吐きそうだよ」
「相変わらず大袈裟だな」
「大袈裟じゃないよ。本田くんみたいに心臓に毛が生えてないんだから」
「言うじゃん」

本田くんはニヤリと笑うと、私の頭を軽くポンと叩いた。
 
「俺は広瀬のあの企画はいいと思うから自信もって発表しろよ。万が一、ミスっても芹沢部長もフォローしてくれるだろうから大船に乗ったつもりでぶちかましてこい」

親指を立ててグッドサインを出す本田くん。

「なにそれ、他力本願になってるんですけど」

思わず突っ込んだ。
でも、本田くんの微妙な励ましに安心感が胸に広がり、さっきまでの緊張が少しだけ和らいだ気がした。

「行ってくる」
「ああ。リラックスして頑張れよ!」

本田くんに背中を押されるように、会議室に向かった。