傷つくことを恐れず、自分の気持ちを伝えた森藤さんを尊敬する。
振られても、彼女の表情から後悔の色は全くなかった。

本田くんには好きな人がいる。
森藤さんは私だと勘違いしていたみたいだけど、彼の想い人は私ではない。

私が気持ちを伝えたところで、振られることは確定している。
なにより、私が告白したことによって、彼との今の関係が壊れてしまうのが怖い。

だけど、ある考えが頭をよぎる。

本田くんは今はフリーだけど、いつ彼が好きな人に告白して彼女が出来るか分からない。
もし、そんな日が来たら私は今までみたいに普通に接することなんて出来ないだろう。

何より、本田くんから幸せそうな彼女の惚気話を聞かされることを想像するだけで不快な気持ちになり、胸が締め付けられて辛い。

振られるか、このまま気持ちを伝えないまま、本田くんに彼女が出来てそれを指を咥えて見るのか……。
どちらの方が私にとってダメージが大きいか考える。

それだったら、黙っているより、いっそのこと振られてもいいから『好き』だと伝えた方がいいんじゃないかと気持ちが固まり始めた。
ずっと片想いのままモヤモヤしているのも、精神衛生上悪い。
私はジョッキに残っていたビールを一気に飲み干す。

森藤さんの言葉が憶病だった私の心を刺激し、新たな一歩を踏み出すきっかけになっていた。