同期と私の、あと一歩の恋

「それだけですか?」
「それだけって、どういうこと?」

森藤さんの意図が分からずに聞き返した。

「私、本田さんに告白したけど、好きな人がいるって言われてフラれちゃいました。でも、後悔はしてません」

あっけらかんと自分が振られたことを話し、持っていたビールに口をつける。

「広瀬さん、ホントに本田さんとのことを同期だからで片づけるんですか? 私にはそうは見えませんけど。ていうか、ありえないんですけど!二人を見ていて付き合ってないとか信じられない!だって、絶対に両想いだよ~」

突然の言葉に絶句した。
彼女はいったい、何を言っているんだろう。

「もー、本田さんが告白しないなら広瀬さんがすればいいのに。言わないで後悔するより、言っちゃった方がスッキリしますよ。私みたいに」 
「ちょっと、森藤さん!突然、何おかしなことを言ってるの?お酒飲み過ぎだから。広瀬さん、すみません。ちょっと席を外します」

吉瀬さんは焦りながらそう言うと、森藤さんの腕を掴み、半ば強引に離れたテーブル席に連れて行ってしまった。

静かになったテーブルで一人、私は思考を巡らせる。

『二人を見ていて付き合ってないとか信じられない!』、『絶対に両想いだよ~』という彼女の言葉が頭から離れない。

どうして森藤さんはそんな風に思ったんだろう。