同期と私の、あと一歩の恋

「広瀬さん、すみません。山田さんっていつもあのテンションだから、合わせるのが大変ですよね」

私の目の前には、席を移動してきた営業事務の吉瀬望(きちせのぞみ)さんが座っていた。
その彼女が、申し訳なさそうに謝罪してくる。
さっきまで熱心に自分の推し活の話を聞かせてくれた人だ。
私より二歳年下の吉瀬さんは、仕事はいつも丁寧だし、話が面白くてすっかり仲良くなっていた。

「いや、慣れてるから大丈夫よ。それに飲んでいるところを見せると満足してくれるでしょ」
「確かにそうですね」

山田さんの回避方法は習得済みで、毎回それを実践している。
 
「あ、そういえば羽山さんは欠席?」

吉瀬さんといつも一緒にいるはずの羽山琴葉(はやまことは)さんがいないことに気づく。
この二人はニコイチといった感じで、飲み会の時はいつも隣り合って座っていた。
吉瀬さんと同期の彼女は可愛らしい雰囲気だけど、よくお酒を飲むイメージだ。

「そうなんです。今日は頭が痛いみたいで」
「大丈夫なの?」
「はい。琴葉は片頭痛もちなので、薬飲むように言って家に帰らせました」

気がつけば広いテーブルに吉瀬さんと二人。
ビールを飲みながら向かい合って話していると、どこからか視線を感じた。