気まぐれヒーロー





「怖かったです。私、すっごく怖かったんですから!!」

「何がだよ」



怒ってみても、ジローさんはひょいとかわしてしまう。



「だって!ジローさん……え、えっちだったもん!」

「だから何が」




くそう、まだシラをきる気か!てやんでい!!




「その、舐める、とか……」

「なんで舐めんのがえっちなんだ」

「えっちはえっちなんです!!イヤだったんです!!」

「タマは喜んで舐めてくれたぞ」



うう、通じない……誰かジロー攻略法を私に手ほどきしてくれ……!!


他の三人は、ニヤニヤしながら傍観してるし。


こうなったら……最終手段!!



「もうジローさんとお散歩行きません!」

「!」



あ、ちょっと効いた。ジローさんがたじろいだ。


いける!!たたみかけろ!!そこだ、ジャブだ!フックだ!!




「首輪もしません!」

「!!」




おーっとジロー選手、もも選手の右フックが効いたあ!!



「おてもイヤです!」

「!!!」




ああ!ラッシュだ!!ワンツーコンビネーションだ!!


ジロー選手もう後がありません!!





「ぜーったい舐めたりしませんからね!!」

「!!!!」




いったああああ!!華麗なフットワーク!!


もも選手、決めました!!最後は痛恨の右ストレートオオォ!!


ジロー選手をKOしましたああ!!!




甲高いゴングの音が、会場に響き渡る。




『ありがとう!みんなありがとう!!』




紙ふぶきが舞うリングの上で、私は拳を高々と掲げ、号泣していた。


ついにやったのだ。


チャンピオン、やさぐれジローを打ち破った!!


鳴り止まない『もも』コール。


いつまでも、私は歓喜の渦に酔いしれていた。