気まぐれヒーロー




「全部覗いてたの!?」

「様子見にきてやったんだよ。感謝しろよ、もうちょっとでこんなとこで脱バージンするとこだったんだからなぁ」

「なっ……何よ、変態トラさん!!」

「おいコラ。なんでお前まで俺をトラって呼ぶんだ。しょーもねえことジローに仕込まれてんじゃねえぞ、犬っころ」

「犬っころって言うな!」

「クロちゃん、あんまコイツからかうなって。慣れてねえんだから」




売り言葉に買い言葉な私達のやり取りを、制するハイジ。



あんただって最初からかってきたじゃん!って言いたかったけど、ハイジよりもこのキンパツの方が何倍もムカつく!!!




「ハイジ!!気をつけろ、ジローちゃんが……!!」




そんな私達の後方から、何やらケイジくんの苦しそうな声がした。

三人で振り返れば、お腹を抑えてうずくまっているケイジくん。


その横で腕ごと胴体をぐるぐる巻きにされているジローさんが、再び鬼と化し、仁王立ちになっていた。


恐らくケイジくんは彼に、お腹に蹴りを入れられたんじゃないだろうか。

ジローさんの目が、鳥肌立ちそうなくらいアブナイものになっている。



「クロちゃん、早くアレ!!」



身の危険を察知したハイジが、トラさんに向かって慌てて叫ぶ。


すると「そう焦んなって」と言いながら、のんびりした動作でトラさんは制服の内側を探ると、一冊の何かの雑誌を取り出した。


その雑誌を開けるとトラさんはジローさんの目の前に、見せ付けるようにバッと突き出した。




見せられた雑誌を凝視する、ジローさん。




数秒後、彼の鼻から大量の血が美しい弧を描き、噴出されたのであった。




崩れ落ちるジローさん。



雑誌の表紙をよく見てみれば、えっちな服を着ていやらしいポーズをとったおねーさんの写真が。




トラさんがジローさんに見せたのは、エロ本だった。