気まぐれヒーロー



がっちりと首輪を握られているから、びくとも動けやしない。


徐々に狭まってくる、先輩と私との距離。



え、ウソ……やだ、何で!?



信じらんない、ハイジの嘘つき!!どこが女嫌いなのよ!!


超積極的じゃんか!!スケベじゃんか!!




美しい顔は、もう目と鼻の先。



キス……されるの?

そんなの、イヤだ。



確かに先輩は絶世の美形だよ。
女の子なら、誰もが憧れるし相手にしてほしいって願うだろう。


キスなんて、どんとこいなのかもしれない。



でも、私はこんなの受け入れられるはずがない。

だって……初めてなんだよ。ファーストキスなんだもん。


私だって、初めては好きな人としたいなんて人並みに思ってるわけで。


一応そんな、乙女な夢を持ってたりすんのよ!!


ジローさんはカッコいいけど、好きな人じゃない。


それにジローさんだって、私のこと好きじゃないだろうしむしろ犬として見てるし、なおさらムリだよ。


っていうかジローフィルターどうなってんだ!!


この人、完璧に私を犬だと思ってる。
本気で、真剣に心の底から。



一つツッコむとすれば、犬は話せないと思うんですけど……!!そこはどうなんですかジローさん!!


色々と考えが頭を巡っているうちに、鼻先がくっつきそうなくらいに近く、ジローさんが迫っていた。

長い睫毛を伏せた、艶めかしい目にクラッとする。



唇が、触れそうになる。




「や……!」




瞬間的に、肩に力が入る。
唇が重なりそうになる寸前で、私はジローさんから顔を背けた。



どうにか、キスは免れた。
ファーストキスは守り抜いた!!