「お前、悔しくねーのか」
「……え?」
ドキッと一回心臓が跳ねた。
ハイジの声も、真剣そのものだったから。
「あんなこと言われて、悔しくねーのかよ。見返そうと思わねえのか」
「……」
甦る、さっきの田川と本城さんのセリフ。
思い出したら腹が立つけど、それ以上に惨めになるからもう……忘れたかった。
「いいんだよ、もう……終わったことだし。私がブスなのは本当のことだし」
掘り返さないでよ、せっかくちょっと心の傷がマシになってきたのに。
「ダメだ。俺がスッキリしねえ」
「は!?」
何ですと!なんでそこでハイジが出てくんの!?
「ちょ、ちょっと待ってよ!関係ないじゃんハイジには!」
「いーや、あるね。俺とお前はもう、関係を持っちまったじゃねえか」
な、なんか言い方がやらしい!!
……じゃなくて、何考えてんだろ……。
「まさかリンチとかやめてね……?」
「バーカ、んなことしてもつまんねえだろーが。お前がやんだよ」
まったくもって意味がわかりません、ハイジさん。
怪訝な顔をしている私に、ハイジはニッと不適な笑みを浮かべてみせた。
もんのすごく嫌な予感が……。
「もも、俺がお前の人生変えてやる」
びしっと私を指差す、何だかやる気満々な緑頭のおにーさん。
「イヤですごめんなさい」
とりあえず丁重にお断りしておいた。
「即答かオイ。──あ、待て逃げんなコラ!!」
ここは逃げるが勝ちだ!!
急いでドアを開けると、私は屋上から走って逃げた。
「明日昼休み、屋上で待ってっからな!!こねえと、意地でも探し出してさらいに行くからな!!!」
さ、さらうって何!?校内で誘拐事件ってどんだけ!!
悪魔の声が後ろから聞こえた気がしたけど、無視して私は階段を急ピッチで降りた。
さらばハイジ。

