気まぐれヒーロー




って、待った!!!


私、一瞬何考えてた!?犬になってもいいだなんて……危うく人間捨てるとこだった!!


熱に浮かされて、自分から犬の道を選びそうになってた!!


頭がぽわぽわしてた!顔もニヤけてたはず!!



相当ヤバいな、これ。

自分が自分で怖い。


もうすぐで、ジローマジックにかかってしまうとこだったよ!


マジシャンジロー……末恐ろしい……!!



「なぁ」



煌びやかな衣装を身に着けたマジシャンジローと頭の中で格闘している私を、現実のジローさんが下から覗き込んでくる。



「ふあいっ」



唐突すぎて、返事もわけわからんものになってしまった。







「舐めてくんねえの?」







 ………………


 ……舐め……?


 ……舐め……ナメ……



「ナメコは山に行けばあります。ナマコなら海に行かないとダメです。ナメクジならそこらへんの石の下にいます」



頭が真っ白だった。


ジローさんが何を口にしたのか、脳が理解しようとするのをやめたみたいだった。


虚ろな目で遠くに意識を飛ばしている私に、ジローさんは顔をしかめた。



「誰がそんなヌメヌメした生物の話してんだよ。舐めてっつってんの」

「何を!?」

「俺を」

「どこを!?」

「わかってんだろ」




わかってたまるか!!



もう、もう……ちょっと私を休ませてください……。