交わる視線に、顔が熱い。
ドキドキが加速して、早くぅ~と胸の中でジローさんを急かしていた。
カッコよすぎる彼とそんなに長くも見つめ合っていられず、目を逸らそうとした時だった。
「おて」
と、ジローさんが言った。
……おて?
真面目な顔でジローさんは右の手の平を上に向け、私の前にずいっと差し出してきた。
こ、これは!!このポーズは!!!
まさしく“あの”ポーズなんですねジローさん!!私にそれを要求するんですね!?
犬ならば、みんな教え込まれる基本技を……!!
私は凄まじく悩んだ。
これは、従ったほうがいいのか。
いやしかし私は仮にも、人間じゃないか。
いいのか花鳥もも!!
人間としてのプライドを捨てて、本物の犬になってしまっていいのかっ!!!
でもでも……ジローさんの眼差しが「早くしねえかてめえ」と言わんばかりに、尖っている。
きっとタマちゃんはちゃんと「おて」をしていたんだろうし、先輩に従順だったに違いない!!
今ここで言うことを聞いてこの場を切り抜けるか、拒否して何をされるかわからない恐怖を味わうか。
答えは決まってる。

