気まぐれヒーロー





「ジローさん、とか?」



今度は先輩は、何も言わなかった。


ジローさんでいいんだろうか。


すると体育座りな私の横で寝転がってるジローさんが、不意に片手を持ち上げて、私の頬を撫でてきた。



「わわっ、な、何するんですか!?」



びくってなって、仰け反ってしまった。


ちょっと、本当にこの前鼻血噴いた人と同一人物!?
いきなり触ってくるなんて……だ、大胆!!


思いこみってすごい。
私を女ではなく、タマだと思い込むだけでジローさんがここまでできちゃうだなんて。


ますます落ち込んでしまう。



「可愛いな、お前」



かか、可愛い!!?


男の子に言われたい言葉ベスト3が、こうも容易く叶ってしまうとは……!!



「タマにそっくりで」



有頂天になっていた私は、彼の次のセリフで地面に叩きつけられた。



やるじゃないの、ジローさん。


持ち上げといて落とすという、アメとムチね……。


ふと、何気なくジローさんの手元に視線を流した時だった。


制服の袖口の隙間から覗く、手首。



そこに見えた……小さな、黒いアザみたいな跡。