気まぐれヒーロー





「あの!」



出っ張りの上に向かって、私は声をかけた。


返事は、ない。



「私も先輩のとこ行っていいですか?」



数秒経ってから「狭いから走れねーぞ」と、かったるそうな声が降ってきた。


無邪気に走り回る気は最初っからないんで、と心の中で返事しといた。


だけど、私どうして先輩のとこに行こうと思ったんだろう。どんな人かよくわからないのに。この学校のキングなのに。


でも一人でいたって、することがない。
勝手に逃亡しちゃったら、後からステキな報復が待っているかもしれないし。


それに……不思議と、白鷹先輩を危険だとは思わなかった。



私が世間知らずなだけで甘いのかもしれないけど、よくわからないからこそ、知りたい気持ちもあった。


変人だと思っている彼の、常識的な部分を発見したいのもあったかもしれない。
そしたら安心できるような、そんな気がした。


幅の狭い細いハシゴはすごく登りにくくて、手こずっている私にスッと上から手が差し伸べられた。


顔を上げれば、無表情な白鷹先輩。


改めて彼の手に触れるのは何だか戸惑いがあったけれど、せっかくの好意を無視するのも失礼だし、私は先輩の手に掴まった。


引っ張り上げられて、やっとこさ登った私は「ありがとうございます」とお礼を言ったものの、先輩はもう仰向けに寝転んでいた。



日本人に銀髪っていうのは合わないと思うけれど、日本人離れした顔立ちの先輩にはよく似合ってる。
それに銀だけじゃなく、黒髪も混ざってるからそれがいいのかもしれない。



ごろんと寝転がっている先輩の横で、三角座りな私。



ただぼうっと、先輩は空を眺めていた。



あまり口数の多くない先輩。会話なんて、ない。



体を通り過ぎていくそよ風が、気持ちよかった。




「あの……私、そんなにタマちゃんに似てますか?」




沈黙に耐えかねて、私は先輩に質問してみた。