「ももちゃん!!ア、アサミちゃんが……!!」
私が平常心を取り戻したのは、小春の緊急事態を知らせる声で、だった。
我に返って朝美の首から手の力を緩めれば、彼女はぜーぜーと肩で息をしながら、モンスターでも見るかのような目つきで私を瞳に映していた。
「あ……ご、ごめ~んやりすぎちゃったぁ」
朝美風に謝ってみたけど彼女から送られる痛々しい眼差しに、冷静に「ごめんなさい」と謝罪しておいた。
とりあえず私のとった半狂乱な行動のほうがインパクトがあったのか、クラスメイトからはイケメン王子ハイジ様の件には触れられなかった。
だけど私は重大なことを、すっかり頭から追いやっていた。
ハイジの電話に出なかった。
……ハイジがここに来ちゃったらどうしよう……それこそ一貫の終わり……。
もう一回私からかけ直すべき!?
でも絶対怒られるし、アイツ意外と執念深そうだし、私もアルプスに連れて行かれておじいさんとヤギとおっきい犬と暮らすことになったら……ああ、けど私も犬だからいいか……いや、違う。
タヌキ……タガメ……石ころ……ヒキガエル……どれだっけ……。
っていうかもう私ってどんな生物なの!?
「あー……あのさぁ、花鳥、だっけ」
ぼんやり自分という存在について考え込んでいると、私の横に一人の男子が立っていた。
「はい?」
「えーっと……一緒に来てくんねえ?」
そこにいたのは金っぽい茶髪の男の子。
ピアス開けてて、制服の着こなしもゆるい感じ。
そしてすっごく可愛い顔立ちの、男の子だった。
なんでこんな男子が私なんかに声をかけてくれるの!?まさか学校でナンパ!?
人生初のナンパをここで経験しちゃうなんて……それも相手は爽やかイケメンだし……ついに私にも春がキター!!
氷河期を乗り越えた!!よくやった、よく耐えた花鳥もも!!


