「タマ?何言ってんのお前、ユーレイでも見えたか」
「違えよ、俺の犬がいた」
なおも外から聞こえてくる二人の会話に、ひたすら早く行ってくれと私は願うしかなく、しゃがんで隠れていた。
「今の、あたし見てたよね!?」
「はぁ?あたしに決まってんじゃん!!」
「犬だって!いや~ん、白鷹先輩の犬になりた~い」
女子の周りには、ピンクなハートが飛び交っている。
人間にも見てもらえない私がここにいるっていうのに、自らペット宣言しちゃうとは……ジローフェロモン恐るべし!!
「あ~ん行っちゃったぁ……」
「ねぇ、先輩めっちゃ顔赤かったね~」
「カワイ~」
「ああもう押し倒したい!!」
お、押し……!?
なんて大胆なこと言い出すの、おじょーさん達!
それとも私が時代遅れ!?もしかして、今は女が男を押し倒す時代なの!?
最近女性が強いってSNSとかでよく目にするけど、そういう意味だったのか!!
なんてこったい……そんな時代を生き抜く自信がありません……。
動物変化記録を更新したと同時に、私は新たな時代の波に乗り遅れた。
それから数日間、何事もなく平和だった。
いつハイジからお呼び出しがくるかとビクビクしていたけど、ヤツが私のスマホを鳴らすことはなかった。
校内で彼らを見かけることも、なかった。
だからあの不良キングダムで起こったことは夢だったんじゃないかとさえ、私は思い始めていた。
私とハイジの関係性を疑う目も次第に消えつつあって、平凡な日々を取り戻した……と浮かれていた私に、悪夢は突然襲いかかる。


