気まぐれヒーロー




整いすぎている顔を三年生の教室へと、白鷹先輩はゆっくり上げた。

一層膨れ上がる、生徒達の声。

けれど先輩がその目に映すのは、「人殺し」という暴言を吐いた張本人だけのようだった。


じっとして、先輩は動かない。


ゾクゾクするような、鋭い眼差し。やっぱり、綺麗な人だった。


不意に横にいた黒羽先輩が腰を屈めて、グランドから“何か”を拾って手にした。


その“何か”を握り締めると黒羽先輩は白鷹先輩の視線の先を見つめ、口元を歪めた。
悪だくみをしていそうな、そんな不吉なことを予感させる笑み。



「お、おい……まさか……やめろ黒羽!!!」



三年の先輩が声を上ずらせながら、黒羽先輩に叫んだ。でも黒羽先輩の顔から笑みが消えることは、ない。


そして──


次には黒羽先輩は野球のピッチャーのように振りかぶると、三年生の教室に向けて手にしていた“何か”を投げた。


この時初めてわかった。

“何か”は、石だったんだ。



「ウソでしょ……!?」



危ないと思った時にはもう遅く、物凄い速さで石は教室目掛け飛んでいく。


歓声が途端に悲鳴に変わり、誰もが目を見張った。