気まぐれヒーロー




あれから自分のクラスに戻ったのは、五時間目が終わった後だった。

最後の授業が始まる前の、ちょっとした休み時間。

気配を消して今だけは石ころになれたらいいのにと願いながら、教室の戸を慎重に開けた。

ハイジと大規模な鬼ごっこを繰り広げた後だ。
きっと私について、あれこれ噂が飛んでるに違いない。

そう思いながら一歩足を踏み入れると——
教室はいつも通りがやがやしていて、誰も私に気づいていない。

もともと存在感なんてないんだから、当然といえば当然。このまま何もなかったように席について、授業受けて帰ろう。


大丈夫、私は石ころ石ころ石ころ


石ころ石ころ石ころ石ころ………



「あ、ももぉ!やっと帰ってきたぁ!!ねぇあんた一体ハイジくんに何したのよ!?」



石こ……ろ………


…………。


いきなり教室中に響き渡る、誰かのはしゃいだ声。

縮こまりながら自分の席を目指していた私の努力も虚しく、クラスメイトの視線が一斉にこちらに集まった。

背を丸めて歩いていた私は変な体勢で静止し、石ころの術はあっさり見破られてしまった。


「ほんとビックリしたんだからぁ!!あのハイジくん自ら出てくるなんて、よっぽどすごいことやらかしたんでしょう!?」


私の心情なんてお構いなしに、よく通る声をまき散らしながら近寄ってくる女子。


畝野 朝美(うねの あさみ)


彼女は私と出身中学が一緒で、今は同じクラスにいる。別に特別仲が良いわけじゃない。だからって悪いわけでもなく、普通に話したりはする程度だった。


「いや、なんか人違いだったみたい!だって私みたいな地味なのが、あんな人と接点あるわけないしね!!もうすごい迷惑だよ~あはははは」


ここはどうにかごまかさなければ!!

私がハイジと関わりあるなんて……いやいや、それよりも白鷹先輩とのことがバレたら……マイ高校ライフはジ・エンド!!