気まぐれヒーロー



「へ?ぜ、絶対いや!」


もう今日限りで、こいつらとはおさらばしたい。じゃないと私の人生変わるどころか、終わってしまう。

ここが最後の砦だ、死守するのよもも!!


「ふーん。また鬼ごっこしたいんだ?」


にこにこ顔は崩さずに発したヤツの脅迫に、私はいとも簡単に屈してしまった。

あの一大騒動がまた繰り返されるのかと想像したら、連絡先を教える以外の選択肢はなかった。


「スマホ貸せよ」

「、くっ……!!」


断腸の思いで言われた通りスマホを渡すと、何やら勝手にハイジは操作して、ポイと投げ返してきた。


「ちょっと!危ないでしょーが!!……ん?」


慌てて受け取り、画面に視線を落とす。

メッセージアプリの連絡先一覧に登録されていた、名前。



『私のご主人様☆超イケメン王子ハイジ様(はあと)』




「ふざけんなあああああ!!!!」

「ばっか、声でけえっつってんだろが!!」




危うく壁にスマホを投げつけそうになったけど、ハイジに口と手を抑えられた。


「じゃ、そーいうことだから。俺が呼び出したら、来いよ?」


うぅっ、……こんなむちゃくちゃなことある!?


「鬼!悪魔!!卑怯者っ!!!」

「ひでえこと言うなよももちゃん。仲良くしようぜ?先は長いんだしなぁ」


意地悪な笑みを貼りつけた、緑の悪魔。


なんで……なんでこんなことに……。

たまたま屋上で告白した時にこいつがいて、たまたま私がキングのペットに似ていたからって……あんまりよ……。



悪魔と契約を交わした(かなり一方的にだけど)私には、抵抗する術なんてなかった。



せめて連絡先の『私のご主人様☆超イケメン王子ハイジ様(はあと)』を『アルプスのグレグレ少年ハイジ』にしとこうと思った。