ふふ……結局私は、人間にはなれないんですね……。
一応人間やってるのに、人間として認めてもらえないなんて……なんと不公平な世の中……神様のばかん……。
でもまだ犬に昇格しただけでもマシかなんて思ってしまう自分が、虚しかった。
「やべえ……ホントそっくりだお前」
先輩……うっとりとした目で見つめてくるの、やめてください……。
「……似てるか?」「わからん、でもジローちゃんやからな」と、横でひそひそ話し合っている双子。
“ジローちゃんだから”
それで済まされるのも、先輩なら何となくわかる。
ちょ、ちょっと変わった人なんだねジローさんは。本当にこの人ヤンキーキングなんだろうか……。
私にはただの──……いや、やめておこう。
「私、授業行ってくる」
これ以上ここにいたら、ダメな気がした。
ジローワールドに引き込まれたら帰ってこれなくなる、そんなの絶対いやだ。
ハイジやケイジくんや、その他のみなさんもよく平気でいられるなと思った。慣れるもんなんだろうか。
ずっと一緒にいれば、ジローをスルーできる能力が身に付くんだろうか。
そんな人生に役に立たなさそうな能力を身につける気もさらさらないので、私は足早に立ち去ることに決めた。
「タマ、また来いよ」
教室から出て行こうとすると、背にかけられたのは白鷹先輩の少し名残惜しそうな声。
タマって……私のことかしら。
振り返ってみたら、やっぱり先輩は偉そうにソファーに腰掛けて私を見つめていた。
もうタマになっちゃってんの!?私ももなんですけど!!
しかもまたここに来ないといけないの!!?冗談じゃないんですけどっ!!!
なんて心の叫びがキングジローに返せるわけもなく、苦笑いでぺこりと頭を下げることしか私にはできなかった。
そしてようやく不良キングダムを脱出した私はため息を何度も吐きながら、とぼとぼと自分の教室に歩き出した。
正直もう家に帰りたかったけど、サボるのは気が引けたからとりあえず出るだけ出よう。

