「んだよそれ!女じゃねえのかよ!?」
「女だろ、メスじゃねーか」
なおもキング白鷹はしれしれっと言い放った。「バカじゃねーのお前」的な声色で。
ハイジの目に一瞬殺気が宿ったのを、私は見逃さなかった。
……もう……何なのこの人……。
ついていけずお手上げ状態の私に、ハイジが簡単な説明をしてくれた。
『タマ』っていうのは白鷹先輩が飼っていた犬だということ。それはもう可愛がりまくっていて、その溺愛っぷりは半端じゃなかったということ。
けれど病気で去年亡くなってしまったということ。
先輩の落ち込みようも半端なく、しばらくは何を聞いても「タマ」しか答えなかったということ。
ちなみにタマちゃんの犬種は、パグだった。
いや……うん、もうね、疲れちゃったよ私。
確かにペットが亡くなるのは、とても悲しいことだと思う。よくは知らないけど、先輩は相当タマちゃんを愛していたんだろう。
さっきの先輩の様子を見ていたら、それは感じ取れた。
今さら「なんで犬なのにタマなんですか」なんて聞いても、たぶん先輩にとっては愚問すぎるだろう。
「犬にはタマだろ」なんて言いかねない。この人なら。きっと、しれっと言っちゃうんだろう。
でもさ……この流れなら全員、人間の美女だと思うでしょうよ!?

