複雑な表情のハイジとケイジくん、そして私に、先輩は穏やかに声をかけてくれた。
周りのみんなも、下を向いて沈痛な面持ちだった。かける言葉も思いつかないのかもしれない。
そして先輩は私達に、制服のポケットから取り出した一枚の写真を見せてくれた。
写真を持ち歩くほど、好きだったんだ……。
それが余計に胸を締めつけて、苦しくなった。
きっと先輩は病に伏せた彼女を病院に通って、励ましていたんだろう。
精神的な支えになってあげて、慎ましくも愛を育んでいたんだろうな……。
それなのにその甲斐も虚しく、彼女はこの世を去ってしまったなんて……どんなに先輩は辛かったんだろうか。
私にはそんなの、計り知れない。
決意を固めて、私達三人は写真に視線を落とした。
そこに写っていたのは、犬だった。
先輩の彼女は、犬だった。

