元通り……
太郎さん……?
突飛な彼の発言に、私の表情はその意図を理解できていないと、丸わかりだったんだろう。
ケイジくんは、話を続けた。
「……俺らと出会う前の生活にな」
トーンの落ちた彼の声に、察しがついた。
合ってるかはわからないけど。
きっと、彼が言いたいのは……
“何事もなく平和に暮らしたいなら、一緒にいないほうがいい”
太郎さんとあの夜、車内で交わした会話に通じるんじゃないだろうか。
“それをももちゃんが望むならな。決めるのは、ももちゃんだよ”
『私が望むなら』
太郎さんもケイジくんも、同じことを口にした。
ケイジくんは自分達のせいで、私が本城咲妃達に嫌がらせや暴行を受けたと思ってるのかもしれない。
どこまで知ってるんだろう。
何でも把握してそうだけど、そうじゃないかもしれない。
自分達と関わったから、妬みの的にされたと思ってるだけかもしれない。
だからそう言ったの……?
太郎さんは、よくはわからないけど途轍もない権力を握っているらしくて。
その、ヤク……ヤーさんの世界の人で。
そんな中でも、『若』と呼ばれていたからには……それなりの地位にいる人。
私でも、何となく想像できる。
多分太郎さんに頼めば、もう“彼ら”と接触することはないこと。
“彼ら”も、私に近づいては来ないだろうということ。
そして本城咲妃達も……私や小春に、二度と手出しをしてこないだろう。
それこそ、何でもなかったように
これまでの“彼ら”との日々は幻だったかのように
全てが、元に戻る。
平和で平凡な、“私の世界”が返ってくる。
“彼らと離れたい”
太郎さんに、そう頼みさえすれば──。
ハイジに絡まれることもなく
タイガにからかわれることもなく
ケイジくんや飛野さんと話すことも……
ジローさんのペットとして、過ごしていたことも
何もかもが、“夢”として終わっていく。
だけど……それでいいの?
前の私なら、望んでいた。
平凡だった生活を、返して。離れたい。
不良となんか、一緒にいたくないって──。
でももう、そうじゃない。
まだ彼らと過ごすようになってから日は浅いけれど、その間に築いてきたものは、沢山ある。
嫌なことばかりじゃなかった。
彼らに気づかされたこと、教えてもらったこと、色々あった。
“彼らに”、じゃなきゃわからなかったこと、いっぱいあったんだ。
私がしようとしてることは、リセット?
違う。
これはゲームなんかじゃ、ない。
現実なんだ。
ボタン一つ押せば、時を遡れるなんてこと、できやしない。

