目をぱちくりさせている小春に、ケイジくんは背を屈めて彼女に目線を合わせると、ふっと表情を和らげた。
「よう頑張ったな。小春ちゃん、度胸あるやん。惚れてまいそうやわ」
彼の笑みが、とても優しいものへと変わりゆく。
今度は小春を怖がらせないように。怯えさせないように。
顔がそっくりとはいえ、ハイジじゃ絶対にしないような柔らかい微笑みに、私も無意識にケイジくんに見惚れていた。
「ももちゃんを助けてくれて、ありがとな」
温かい瞳が小春に向けられて、彼は大きな手を伸ばすと、彼女の頭をぽんぽんとした。
さらにケイジくんの笑みが、深くなる。
優しい声。優しい瞳。優しい、手。
小春は、恥ずかしがって逃亡するわけでもなく、いつもみたいに一歩引いちゃうわけでもなく。
時を止められたみたいに──彼に、目を奪われていた。
顔を赤くしつつも彼女の眼差しには熱が宿っていて、濡れた瞳で彼だけを、見つめていた。
私はその時、“何か”を直感したんだ。
でも、まさか……まさか、ね。
小春に限って、そんなはずない……よね?
「小春……?」
瞬きをすることさえも忘れちゃったような小春に、控えめに声をかけると、彼女はハッとなって私の方を見た。
その表情は、どことなく戸惑っているようにも思える。
その『戸惑い』が何に対してかは……私の“直感”に繋がっているのかもしれない。
気まずそうに俯いちゃった小春はすごすごと、私の後ろにさらに引っ込んでいった。
もしも当たってたら……?
私の“直感”が当たっちゃってたら?
っていうか、小春はかっちゃんのことが……、だと思ってたんだけど!!
違うの!?もしかして違っちゃってた!?
まさか……かっちゃんはただのキューティー仲間なだけだったとか、そんなオチ!!?
あんなに仲良しこよしで、超お似合いなのに!!
キューティー同盟組んじゃいそうな勢いなのに……!!
「ももちゃん、太郎さんに頼るんも一つの手やで」
厚かましくも私もキューティーの壁をよじ登ろうとし出した妄想は、ケイジくんの言葉によって、ピタリと止まった。
そちらを見れば彼は校舎の壁にもたれ、タバコを一本咥えてライターで火を点けようとするところだった。
けれどそうしかけたところで、彼は何かを思い出したように少しライターを見つめた後、咥えていたタバコを火を点すことなく箱に戻した。
たぶん、それは私達への配慮だったんだと思う。
ついさっき、男にタバコの火で脅された私と小春への。
手持ちぶさたになった両手をポケットに突っ込んで、ケイジくんは冗談めいた雰囲気なんて微塵も感じさせないほどの、真剣な眼差しを私に突きつけた。
「太郎さんやったら、全部“元通り”にしてくれる。それをももちゃんが望むんやったらな」

