「ももちゃん、ど、どうしよ……」
そして。
頭の中で、『オメーと一緒にすんじゃねえよ!』とやたら反抗的なタヌキやらタガメ達とぼこぼこ殴り合っている私に、小春がヘルプの眼差しを投げ掛けてきた。
でも……私が何とかするよりも先に、“彼”が動いた。
不意に小春に歩み寄るケイジくんの行動を、私はただ目で追っていた。
彼は腰を屈め、小春の膝の裏に腕をまわし──
「えっ!?や、ちょっと待っ……きゃあああ!!!」
軽々と、彼女を抱き上げた。
お姫様抱っこで。
「お、降ろして!!」
「ちょ、暴れたらあかんて!!落としてまうって!!」
「何でもいいから早く降ろして~!!!」
ジタバタと、ケイジくんの首にしっかりしがみつきながらも、小春はめちゃくちゃに暴れていた。
私はあんぐりと大口を開けて、その二人の光景を放心状態で眺めていた。
小春のパニックぶりが本当に凄くて、見てるこっちがあわあわしちゃうくらいだった。
ケイジくんも、彼女が落ちないように必死で支えてるし。
小春は、男の子に話しかけられるだけでテンパっちゃって、下を向いて黙り込んじゃうような子。
それがいきなりお姫様抱っこなんかされちゃったらそりゃもう、どエライことになるのは目に見えてる。
っていうか、すでになってるんだけど。
加えて、相手が超有名な赤髪のヤンキーときたら……
限界突破して、小春がぷっつんしちゃうじゃないかってヒヤヒヤした。
小春がキューティーなこはるんじゃなくなっちゃったら、ヤダ!!
小春には、いつまでも可愛くいてほしいんだ!
「ケイジくん、このままじゃ小春がキューティーじゃなくてファンキーになっちゃうから!!降ろしてあげて!!!」
とりあえず、ファンキーな小春を想像してみた。
『こないだジャマイカ行ったらぁ~ガンガンナンパされちゃってぇ~激アゲ~?みたいな~。Hu―!!』
私の前でノリノリで踊る、ドレッド頭なガングロ小春。
い……イヤすぎる!!!
小春がそんな風になっちゃったら、私もうキュンキュンできなくなる……!!
「言われんでも、……」
小春の大暴れについに観念したのか、ケイジくんは彼女を地面にそうっと降ろしてあげた。
地に足が着いた瞬間、それはもう凄い勢いで小春は私のとこまで駆け寄ってくると、私の影にサッと隠れた。
「かなわんなぁ……そんなに俺がコワい?」
「……」
「でもほら、もう大丈夫やん」
「……あ、ほんとだ……」
困った顔をしながらもケイジくんは、私の後ろで怯えながら顔を覗かせている小春に話しかけ、無邪気に笑ってみせた。
小春は彼に言われて、元通りになっている自分に気づいたみたいだった。
なんてことをするんだと、思ってた。
だけどどうやらケイジくんは、へなへなになった小春の腰を治してあげるためにやったことらしい。
強引なやり方だけれど、それが彼らしいなって思った。
事実、小春は普通に立っているしね。

