気まぐれヒーロー



もう昼休みはとっくに終わっていて、五時間目の授業が始まっている。


自分の教室に帰りたい。鬼ハゲ教師の授業なのに。
サボったなんて思われたらただでさえ悪い英語の成績が、崖っぷちに……。



でも誰も「授業いってきまーす」なんて言わないし、言うはずもなかった。


まともに授業に出るような人達ではないんだろうし、どうも白鷹先輩が私を自分達の巣に残らせたことのほうが重大らしい。



「ジローちゃん、こいつは大丈夫なんだな……?フェロモン出てねえからか!?なぁそうなんだろ!?そこら辺に転がってる石ころみてえなもんなんだよな!!?」

「セクシーのセの字もないもんな~」




15年間生きてきて、人にここまで殺意を抱いたのは初めてでした。


そう……タヌキから始まり(これは自分でだけど)、タガメに格下げされ、最後は石ころへと私は目まぐるしく変化を遂げたのです。


なんという壮絶な転落人生。
最終的には生物ですらないじゃないか。

人類で初じゃないんでしょうか。
進化ではなく、退化で終わった人間は。



『どうですか今のお気持ちは?』

『いや~石っていうのも案外悪くないものですね~、はっはっは』



って、違うでしょうよ!!!


うっかり、自分が石ころの姿でステージでインタビュー受けるとこまで想像しちゃったじゃんよ!!?
しかも案外悪くないとか言っちゃったじゃんよ!!