疑いだしたらキリがなくて、ドツボにはまっていく。
信じようって、思い始めてた矢先だったから。
彼らへの気持ちが色を変え形を変え、確実に私の中で生まれ変わろうとしていたところだった。
だから、怖かった。
ハイジからの、意味深な電話に出るのが。
だって……もし、アイツが、
“全部嘘だった”
そう認めたら。
笑われて、突き放されたら、私は立ち直れない。
大切なものが崩壊していく。
今、私が必死で守ろうとしてるものが何なのか──
見失ってしまう。
誰も、信じられなくなってしまう。
それがなによりも怖かった。
鳴り止まない着信音。
ハイジが何を思ってかけてきたのか、知りたいけど知りたくない。
私は、いつからこんなに臆病者になったんだろう。
今は……ダメなんだ。
こんな気持ちを抱えたままじゃ、きっと真実さえ疑ってしまう。
ハイジ、お願い。
今は私を、放っておいて。
あんたを疑いたくないのに、信じたいのに、今は無理なんだ。
スマホを枕の下に押し込み、聞こえないフリをした。
早く止まってくれたらいいのに。
一心にそれだけを願って、ハイジからの着信を頭の中から消し去った。
やがてピタリと、音が途切れた。
安堵して、小さなため息を零す。
電話に出なかった罪悪感よりも、安心感のほうが大きかった。
もうかけてこないで──そう、祈った。
結局、ハイジからの着信はそれっきりだった。
アイツが私に何を伝えたくて電話してきたのかはわからず終いだったけど、それで良かった。
だって今、アイツの声を聞いたら……私は感情を抑えられなくなる。
アイツに全部、本心を晒けだしてしまう。
冷静でいられなくなる。
ハイジは私にとって、そういう存在。
私は早々とベッドに潜り込み、頭のスイッチをオフにした。何も考えたくない。ただ眠りたかった。
すぐに眠気が訪れ、私は夢と現実の境を越えていった。

